
〈図1 X3の標準ブラシライブラリでのサンプル描画(主にリアル水彩)〉
Painter X3 (Ver.13。読み方は「エックススリー」)が発売され、その試用版が出てたのでダウンロードして使ってみた。
今までの日本語版Painterの発売は、英語版の2~4ヶ月遅れて、というのが普通であったが、今回のX3は英語版と同時発売になった。
ちなみに 2013/7/23 付けで発売されたのはダウンロード(DL)販売の通常版・アップグレード版のみ。
アカデミック版については準備中となっている。
パッケージ版については 2013/8/9 に発売とのことだが、Amazonを見ると、通常版・アップグレード版・特別優待版のみで、
X3の新機能については、公式サイトを参照のこと。
今回(ざっと試用してみて)率直な意見を言うと、12.2SP1からX3にアップグレードに3万円の価値があるのか?といえば、それは疑問に思う。
USドルでも$229なので現在のレートで2万2900円ということだが、これでも高い。
機能だけでみれば、バージョン12.5と言ってもいいくらいの地味な改良。
新機能は地味だが、ソフトウエアのパフォーマンスが劇的に改良しているというならば(Mac版はメモリ管理強化とうたっているがWin版には言及なし)、あるいはアップグレードに1万円、なら考える余地があるが、3万円を払うかと言われれば「No」と言う。
アップグレード対象は11と12のユーザだが、11のユーザならまだ恩恵があるかもしれない。また初めてPainterに触れるというのであれば、この限りではない。
しかしその恩恵にあずかるためには、64bitOS・ハイクラスCPU・潤沢なメモリ量が必須のため、ハードウェアに投資が必要になるだろう。
サンプル画像の様な、アナログ画材(透明水彩)っぽい表現をコンピュータで「描く」ならば、現状やはりPainterしかない。サンプル画像のようなものを「作る」のならばPhotoshopでも簡単である。
以上をふまえた上で、あえてサポート外のwindowsXP(3GスイッチON)に32bit版のPainterX3を試用してみた。
(当然、パフォーマンスについて、過去バージョンとの比較参考にはするが重点項目に入れていない)
以下その感想。また気がついた時に追加していく。
11を使ったときの感想はこちら。
12を使ったときの感想はこちら。
- 起動時間が12より更に長くなった。32bitOSでとれる最大のメモリを割り当てても、スプラッシュ表示に20秒、起動するまでに1分以上かかる。ただし起動したあとに動作のもたつきは少ない。また読み込むブラシバリアントの数を少なくすると起動時間をかなり短縮できる。
→参照:Painter起動時にメモリを節約する5つの方法[1/2] - Ver.11で失われた複数レイヤーを同時に変形する機能が復活した。以前のようにレイヤーのグループ化→グループ毎変形ではなく、レイヤーを複数選択→変形とPhotoshopに準拠した変形になった。
- ストロークプレビューは初心者向け機能(ヘビーユーザには特に恩恵なし)。デジタル水彩などの乗算表示しか有効でない特殊なブラシバリアントや、インパスト機能等3D表現をもったブラシバリアントをブラシ選択時にひと目でわかるように視覚化している
- 詳細ブラシコントロールと日本語訳されているが、実際は簡易ブラシコントロール。ブラシ改造に慣れていない人に対し、アプローチしやすくした機能で、Painterにある膨大なブラシパラメーターから変更頻度の高いものを抽出し見やすくしている。
なので、使い方によるが、必要なパラメータが隠れてしまう場合もあるのでそういうユーザには旧来のブラシコントロールを使うことになる。
機能的には旧来のブラシコントロールの方がむしろ「詳細ブラシコントロール」機能になっている - Ver.12までのブラシコントロールの「一般」の項目が「一般」「不透明度」「テクスチャ」「ストローク属性」に分割された。「サイズ」は「サイズ」「描点ブレビュー」「描点タイプ」に、また「間隔」も「間隔」と「スムージング」に分割されている
- クローン元画像を、簡単に別ウィンドウで呼び出し表示できるようになった
- 参照イメージ機能によりPhotoshopにおける新規ウィンドウと同等の機能がついた。また参照画像にはスポイトツールが付属しているので参照画像から色を拾うことが容易になっている
- カラーミキサーは、世界のPainterのパワーユーザからパレット画像を提供してもらい標準で同梱しているというもの。標準搭載なので間違って変更しても、初期化することが可能
- 遠近ガイドは以前のものよりは使えるが、プリセットで搭載されているのが、一点透視・二点透視・三点透視(消失点上と消失点下)の計4通り。あとは自分で作成して登録するというもの。
- 構図ツールと同じで、遠近ガイド付きでテンプレートとして保存可能。
- 遠近ツールで、ガイド線に沿って線を引く機能は、そのまま表示されているガイド線をなぞらない。任意の点から消失点に向かってペンを動かせば、透視図法にのっとった線が引けるというもので、そこそこ自由度がある。
- ブラシライブラリはVer.11、Ver.12とX3の標準のものが用意されていた。
- 12.2SP1で仕様変更を確認していたナビゲーションフレーム(赤枠)の挙動がおかしいまま修正されていない。ナビゲーションパネルの右クリック(もしくはナビゲーションのメニュー)ででてくる「ナビゲーションフレーム」のチェックを外した状態でPainterを再起動すると、その設定を保持したままだが、その状態ではナビゲーションパネル内のドラッグ移動が出来ない。一旦ナビゲーションフレームを表示し、その後再び「ナビゲーションフレーム」のチェックを外すとドラッグ移動ができるようになる
- 旧来の「ジッター」は「ストロークのジッター」に変更された。それに伴い、プロパティバーに存在する「ジッター」も「ストロークのジッター」に表記変更している。
- バリアントの不透明度、サイズ、テクスチャの反映、角度にそれぞれにジッターのパラメータが追加された。これら追加されたジッターにはサブ項目として「表現設定」(筆圧、傾き、速度等)が設定できる。これにより従来は「描点の種類」が、「円形」や「取り込み画像」の描線の軌跡のみに反映されていたジッター(ゆらぎ)が、不透明度やサイズなどに広がるようになった